代々の職人の家に育ったHさんは、いろいろなものの始末についても詳しい。実は、我が家の敷地内には、古い井戸があった。この井戸を、そのまま埋めてしまっていいものかどうか、Hさんに相談した。「奥さん、井戸は、使わないんだったら、ちゃんとお清めしてから埋めなきやダメだよ。前に、汚い土なんかを入れて適当に埋めもやった家があったが、ひっきりなしに病人が出て大変だった。こういうものは、ちゃんとしておかないと、あとあと崇るよ」Hさんの目付きが真剣なので、これは、いい加減なことはできないと思った。
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そこで、井戸をちゃんとするにはどうすればいいかと聞くと、本来ならば、神主を頼んでお払いをしてから埋めるのだが、そこまですると大変なので、略式で、お清めをしてから砂を詰めてもいいのだという。Hさんの指示で、お神酒を用意し、Hさんにお清めしてもらい、井戸の中にわざわざ運んできた乾いた砂を入れてもらって、井戸の口を封じた。「これでもう、崇られる心配はない。自然には、いろんな力がある。最近の人は、そういうものをないがしろにするが、そういうものを大切にしないと、きっと崇りになるよ」Hさんと並んで、封じた井戸に向かって手を合わせていたら、子供のころに、いろいろな怖いものに手を合わせ、崇りがないようにと祈りながら敬虔な気持ちになったことを思い出した。